

人工心肺施行下では、血液はチューブを通り以下の各器機に導かれます。
その主な順路は、右心房→静脈血リサーバー→血液ポンプ→人工肺→動脈フィルター→上行大動脈に送られ還流します。


人工肺は体外循環において、患者側からの静脈血を酸素加し、かつ二酸化炭素を除去する目的で使用されます。
中空糸膜というストロー状の膜を介してガス交換を行なう膜型人工肺は、血液に対する影響の少ない事などから現在多く使用されています。
また、熱交換器を内蔵し、血液の温度をコントロールする事も可能になっています。


人工肺などの体外循環を構成する器械に血液を導くためのチューブが組み合わされた製品を血液回路といいます。
チューブの長さや構成などは施設ごとにオーダーメイドされた製品もあります。接続するチューブには透明で且つ柔軟な強度のあるものが主に用いられています。
1980年代からチューブ内の血液接触面に生体適合性の向上を目的とした製品が誕生し、人工心肺回路の全器械にも生体適合性の向上が図られた製品が現在使用されています。


心停止を促し、また心停止中の心筋保護のために心筋保護液を心臓に注入します。
心筋保護液供給回路の主な構成品は、心筋保護液を冷やしたり暖めたりするための熱交換器とその液を貯液するためのリザーバー、其々を接続する為のチューブで構成されます。
心筋保護法には多種多様な方法が各施設で施行されておりますので回路が施設ごとにオーダーメイドとなるものがあります。
現在では血液と混合した心筋保護液を使用する施設が多くなってきております。


患者側の右心房から脱血カニューレを介して導かれた血液を集める役目の容器を静脈血貯血槽といいます。
ハウジングが硬いハードシェルタイプと柔らかいソフトリザーバータイプの2種類に大別されます。
これらは体外循環中の貯血や循環血液量および脱血流量の変化を確認する目的で使用されています。
他に、心臓およびその周囲に貯まった血液を視野確保のため吸引回路を用いて血液を吸引し貯血する心腔内貯血槽があります。
心腔内の血液には組織片・凝血魂・脂肪球などが混入しているため、内臓の20μm~40μmのフィルターにて異物を除去します。


遠心式血液ポンプは、ヘッド(容器)と、このヘッドに直接接触しないコーン(回転体)の二つからなるシンプルな構造です。ヘッド内に液体を充填し、コーンを高速回転させると、液体の粘性摩擦を介しコーンの中心部付近は減圧され、コーンの外周部は陽圧となります。
この原理を利用しコーンの中心部付近に流入口、またコーンの外周部に流出口を設けることにより血液は駆出されます。ポンプは小型で効率良く高揚程が得られる等の利点から1970年代から臨床で使用され、現在では血液損傷の低減および充填量の削減等を目的に開発された製品が使われています。


ヘモコンセントレーターは、血液中の余剰な水分を除去する目的で使用されます。
近年、輸血による合併症を回避する為、人工心肺回路には無輸血充填が望まれています。しかし重症例の手術においては、心筋保護液の注入量が増加し、血液が高度希釈の状態になる場合が多くあります。
患者自身の腎臓で、この高度希釈の全てを除水する事は腎臓への負担の増加から困難であるために親水性の多孔質中空糸膜を用いた限外ろ過を原理とした血液濃縮が行われています。
血液が中空糸の内部を還流し、中空糸の外部は陰圧コントロールを行ない、膜の外部へ余剰な水分を排出します。


前述した貯血槽のフィルターに加え、回路を循環してきた組織片・凝血魂・脂肪球などの異物や気泡などを除去する目的で送血回路に最後の砦として用いられています。フィルターの素材は主にポリエステルを使用し、フィルター孔のサイズは25μm~40μmとなっています。
基本的な構造として、血液はハウジングの接線方向に流入し、浮力と旋回流に伴なう求心力により気泡は最上部中心に集まり脱気ポートより除去されます。血液は下方向に向かい、気泡以外の異物はフィルターにて補足され、異物が除去された血液はハウジング下部より流出し、患者側に送血されます。


カニューレとは体外循環において脱血・送血・心筋保護注入等を行なう中空管型の器械です。
目的や部位に応じて多種多様な型があります。脱血カニューレは、2本のカニューレを上下大静脈から個別に挿入する方法と1本のカニューレを右心房から下大静脈にかけて挿入する2つに大別され、静脈血を静脈血貯血槽に導く目的で使用されます。送血カニューレは上行大動脈や大腿動脈に挿入し、人工肺で酸素加・脱二酸化炭素された動脈血を体内に還流させる目的で使用されます。
心筋保護液用カニューレは、心筋保護液を冠動脈に注入する目的で使用されております。
注入方法は、上行大動脈から注入する順行性用カニューレ・冠状静脈洞から注入する為の逆行性用カニューレ・左右冠動脈口から直接注入する選択的冠還流用カニューレの3つに大別されます。
その他に左心系の過伸展予防目的で使用するベントカニューレがあります。